2010年2月4日木曜日

早期英語教育の是非について文献を漁る:「ことばの習得と喪失-心理言語学への招待」

「自力でバイリンガルを育てよう!」さんで紹介されていたこの本を図書館で取り寄せて読んでみた。どうやら、早期英語教育にどっぷり使っている親が期待が持てそうな内容が書いてあるようなので、自分を励ますつもりで。

ことばの習得と喪失―心理言語学への招待ことばの習得と喪失―心理言語学への招待



2005年なので4年前の出版で、学術書ではあるが割と教科書的な内容の本で、初学者にもわかりやすい。全部で5章あるが、関係のありそうな、第3章「母語習得から第二言語習得・教育へ」というところだけ読んでみた。以下、個人的に関心があったポイントを紹介する。

・「敏感期」の話

以前書いたこともあるが、幼児英語教育産業では定番の殺し文句。6,7歳で壁がある、というのが最近の主流の説のようだ。中学生からの学校英語では個人差はあるもの発音の流ちょうさには限界があるのは、誰でも実感するところだ。

・第2言語を習得するプロセスの話

ある程度母語が確立している場合、自分の話す母語とは違う環境に放り込まれた幼児が、しばらくは言葉を使わずになんとかコミュニケーションをする時期を経て、突如ドンと話し始めるという話や、やはり子どもでも最初は定型表現を中心に外国語を使うようになる、という話が、目新しくはないが、やはりそうか、と感じさせる。ワールドワイドキッズでも最初の1年間はインプット、2年目はアウトプット、と言っているのは、こういう研究例・事例に基づいているのだろう。

・第2言語習得(早期英語教育)の利点

「痕跡記憶」の話が面白かった。覚えているという自覚がなくても、記憶は心の奥底に眠っていて、場合によっては何年も経ってから掘り起こされることがあるのだが、外国語の発音でも同じような効果がある、という体験談だ。幼児の頃の綺麗な発音が、思春期を過ぎてから勉強を始めたら戻ってきた、という早期英語教育を実践する親にも業者にも夢のような話だ。もし本当なら、幼児期に高額教材を買ってちょっと試して挫折しても、中学生になったときにその苦労(というかお金)が報われることになる。ただし、50年以上前の外国人研究者の体験談というだけなので、どんな条件で発音が戻ってくるのか、とかそのあたりはまったく不明。あまり期待しすぎない方が良いだろう。

実は、似たような話はうちの姪でもある。うちにあるDWEの教材は姪が使っていたもので、幼稚園児のころ、2,3年は頑張って色々やっていたと思う。とはいえ、レッスンはブルーどまりで、最後はDWEのビデオを見せると泣いて嫌がるようになったり、と典型的な挫折組だ。その姪も今は6年生。最近、小学校で英語があるらしいが、「なんとなく聞き覚えがあるかも」と言っているらしい。残念ながら、ちらっと話しているのを聞くと発音は完全にカタカナ。

早期英語教育の経験者が中学校入学後に英語に積極的、という日本の調査結果も紹介されていた。元の論文にあたっていないのでわからないが、しかし成績に触れていないということは成績には影響なし?

カナダのイマージョン教育(2言語で学校の授業を行う)の成果の報告では、2言語で授業を受けた子どもは、抽象的思考に優れていて、数学や理科などで普通の子どもよりも良い成績を修めている、ということだった。幼いときから2言語を教えると、幼児が「混乱」して、抽象的な思考能力の発達に支障を来す、という主張があるなか、こういうしっかりした証拠は頼りになる。

もちろん、英語とフランス語は言語構造が近いから問題ないが、英語と日本語は異質な言語なので混乱するのだ、とさらに主張する人もいる。が、根拠となる調査結果を見たことがない。それに、では日本語と韓国語の2言語環境なら問題ないのだろうか、とか新たな疑問も。2カ国語環境に置かれた子どもの発達の問題では、ダブル・リミテッドの問題など色々あるが、多くの場合、異文化への適応という問題も含まれているので、そう簡単に結論は出せない。

・フォニックスについて

フォニックスを教えることがプラスになるかどうか、という研究で、否定的な研究結果が紹介されていた。これも、別の本で実は読んだことがある。結局、フォニックス派とサイトワード中心派で分かれていて、その時々によって、主流が入れ替わるのだとか。要は両方必要だよね、ということらしい。

全体的に、早期英語教育に好意的な見方をしている本だった。これから、関連する他の本など、いろいろ探して読んでみるつもりだ。

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