幼児向け英語教育には、いろいろな神話がある。
「X歳までに始めれば、無理なく自然に、母国語を覚えるように英語が身につく」といった、教材会社の宣伝タイプもあれば、むしろ英語を幼児に教えてはいけない、という警告もある。
今回は、この警告タイプについて考えてみた。ぐぐってWikipedia読んだだけで、専門書とかあたってないので、考えてみただけ。
1.母国語が確立する前に外国語を習得させてはいけない。
「早期英語教育」「危険性」で検索すると、誰かから聞いた、という感じでこんな説を紹介しているブログがいくつかある。「人間は8歳までに言語能力が完成するので、早期に二つの言語を学ぶと表面的な思考しかできなくなるそうです」「その後抽象的思考能力が育たなくなってしまう」(あえてリンクしない)。
おそらく、どこかの脳生理学者か何かが言っているのだろうか。どこのどんな学者が言っているのか知らないが、あまりに嘘くさい。というか、嘘。カナダでイマージョン教育を受けた住民はみな痴呆になるのか?そんなわけはない。
この数年で私が学んだのは「脳科学」を根拠にした説はすべて間違っている、という法則なので、この説も例外なく、デマ。
もしかしたら、抽象的思考能力の発達を邪魔する、という程度ならあり得るのだろうか。でも、まともな調査とか理論に基づいた説ではなさそう。
この説の根拠というか出所は、帰国子女・移民で問題になる「ダブル・リミテッド」の存在なのだと思う。セミリンガルとも言われるが、早期に(実際に何歳で、というのは人によって違うが)、外国に行って母国語から離れて、現地で外国語環境におかれた結果、母国語も第2言語も(日本人なら、日本語も英語も)、中途半端になってしまったそんな人たちのことだ。
このダブル・リミテッドの人に会ったことがある。彼女は小学校入学時からドイツに行き、ドイツ語で教育を受けた。その後、中学校入学時に日本に帰国した。一応、帰国子女枠&ピアノで日本の大学も卒業したらしい。私が会ったのはアメリカで、だったが、日本語は中学生程度、英語は発音はいいが外国人向けの英語の授業にもついていけない、ドイツ語は私には判別不明だが、やはり中学生程度ということだった。
彼女の英語の授業のノートには日本語訳が書いてあるのだが、漢字は下手をすると小学校で習うものも間違っているような状態だった。
その他、国際結婚の育児の話を読んだり聞いたりしていても、バイリンガルに育てるというのは並大抵の努力ではないのだ、ということがわかる。普通に放置すると、基本的に子どもは学校で学ぶ言葉を母国語にする。社会で話される言葉と学校で話される言葉がいっしょの場合(海外赴任とか)、期間にもよるけれど、現地の言葉が優位になる。日本でインターナショナルスクールに入れた場合は、家庭以外でも日本語に触れる機会があるだろうから、まだましだろうけど、それでも、読み書きも含めて日本語を相応のレベルに持って行くのはかなり時間と手間を使う必要があるだろう。
ダブル・リミテッドの場合には、移住に伴う文化の変化もある。いわゆるカルチャー・ショックだ。言語が混乱しているだけではなくて、生活のすべてが混乱してしまう。そんななか、自分が何人なのか、というアイデンティティが持てなくなる話は、アメリカに留学中に何度も聞いた。
もう一つの根拠は、脳の中に言葉を学ぶ部分があって、容量に限りがある。二つの言語を同時に学ぶと、ひとつあたりの脳の回路が半分になってしまう、というようなすごく素朴な発想だろうか。これもばかばかしい。
ただし、2カ国語が話されている環境で育つと、言葉の発達が多少遅れる、というのは事実のようだ(伝聞だけど)。一つの言葉に触れる時間が減るから。この言語に触れる時間、というのは生きている人間とやりとりする時間なので、かけ流しでは補えない。この遅れは、後で追いつけるよう(それなりのケアが必要かもしれない)。
ちなみに、「人間は8歳までに言語能力が完成する」というのも信じがたい。大人のような文章が書ける8歳で子どもなんてめったいにいないからね。
最後に、ダブル・リミテッドの人たちがいるからといって、単純に「早期英語教育は危険だ!」と言えないのと同様に、成功している人たちがいれば「まったく問題ない!」と言えないのももどかしい。親子ブログランキングを見ていると、X歳で英検X級!とか、小学X年生で、英語の本も日本語の本も毎日何冊も読んでます!というお子さんが結構いる。でも、もしかしたら、そういうお子さんたちは、もともと頭がいい(というか、言語獲得の才能があった)のかもしれない。そういう個人の能力の差とか、家庭環境の差を無視して、誰でもバイリンガルになれる、というような考えを持ったとしたら、それこそ危険かもしれない。
(その2はこちら)
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