ちょうど一年ぐらい前に「バイリンガル教育の神話?真実?その1」と題して、母国語が確立する前に外国語を習得することの悪影響について考えてみた。
あれからいくつか資料を取り寄せてみたので、それについて考えてみたい。この本に書いてあったことが頭から離れなかったのが、最初のきっかけになった。
0~4歳 わが子の発達に合わせた1日30分間「語りかけ」育児
この本はアメリカ人が書いた本だが、内容としては万国共通で、0歳~4歳の子どもにどのように接すれば言葉の発達を最大限に促すことができるか、というものだ。
うちのなおはちょっと言葉が遅くて1歳半検診でぎりぎり単語が5個、一応基準はクリアするのだが、もう少しなんとかならないかな、と思っていた時期にこの本の存在を知って、買って読んでみたのだった。
書いてあることはまあ、当然といえば当然、ということが多いのだが、納得できることも多く、適当に実践していたら(父親だけがいい加減に取り組んだので、本当に限定的)、効果があったのかなかったのか、一応3歳の誕生日ぐらいでまあ遅れが気にならなくなった。
今現在、言葉(日本語)の遅れが気になっている、というお母さん・お父さんがいたら、とりあえずは試してみることをお勧めする。実際に、このメソッドを試した幼児・試さない幼児の群に分けて、効果があった、ということを示したり、と科学的な方法で根拠も示している。
ここからが本題だが、気になっていたのは、44ページの「ふたつの言語を使う家庭では」という章に書いてあったことだ。ここでは、基本的に2カ国語環境に子どもが置かれることは問題ない、としている。
ただし、「親の母国語でないことばで話しかけたりしなければ大丈夫です。特に後の場合は注意が必要です。(中略)母国語ではないことばでの『語りかけ育児」はできません。」(p.46)という件が気になっていた。
この人は言語療法士なので専門的な科学的研究にもそこそこ詳しいので、もしかしたら、親が母国語以外で話しかけることにより、何か言語発達的・情緒的にネガティブな影響があるということのようにも読める。
ずっとモヤモヤしていても仕方ないので、きっと原著には注があって、参考にした論文が載っているのかもしれない、とエイヤッと買ってみた。
結果は…。訳は原文に忠実で別に参考文献などの提示はなし!無駄に本を1冊買っただけに終わった(1,500円もあれば、薄いペーパーバックが4冊は買えたのに)。
だが、該当箇所を英語で読んでみて、改めて気がついた。「母国語以外で」話しかけた場合に「注意が必要」というのは、言葉が遅れる、というところを指しているのではなく、「母国語以外では」「語りかけ育児」ができないから良くない、と言っているのだ。
ということで、すごく根拠があってこの節がでてくるわけではなく、そもそも著者は2カ国語環境には肯定的なので、気にすることはないだろう、というのが私の結論だ。
もちろん、大原則として、日本語の発達を最優先させたいなら、母国語以外はやらない方が良い、というのは正しい。
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もう一つ、「赤ちゃん学を知っていますか?」という本も図書館から借りて読んでみた。
赤ちゃん学を知っていますか?―ここまできた新常識 (新潮文庫)
この本には「外国語の学習はいつから?早すぎる教育は脳に混乱を生じさせるだけ」という節がある。読んでみたら、他の章はともかく、ここでは特に新しい情報のようなものはない。
一応、章の最初に、「しかし、『早い方がいい』と主張する研究者がいれば、「あわてることはない」と自重を促す専門家もいる。今のところ、”正解”は見つからない。」と中立っぽく書いているが、その後、この大前提が無視され、「早すぎる教育は脳に混乱を生じさせる」という主張を支持する研究者の話ばかり出てくる。
「乳幼児の英語習得…基本言語が未成熟な段階では悪影響を及ぼすことも」という節では、ニューヨークの日本語幼稚園の園長先生の話がでてくる。ここででてくるのは、おなじみの海外移民の話で、まったく異なる言語・文化環境に放り込まれた子どもが適応に苦労する話なので、特に新しいものではない。さらに、この園長先生の体験談親の感想が中心で、学術的な研究に基づいている、というわけでもない。
この本、割と最近の科学的研究の成果を元にしているというフレーズだが、まだ「正解」がないはずのこの問題に、どうしてここまで一方的な話をするのだろうか。
これは、この本が産経新聞の連載を元にしているからだ。産経新聞といえば、ばりばりの保守新聞、小学校の英語教育に反対の姿勢をとっている(これは、検索するとひっかかる記事を読めばすぐわかる。中立なようでいて、まったく中立ではない。)。小学校での英語教育に反対しているのに、幼児になんてとんでもない、というわけだ。
英語教育の話は、「美しい日本(語)を大切にしよう」といった主義主張と絡んで、政治問題として捉えられることが多い。
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私自身が英語育児を絶賛実践中の身なので、客観的な物の見方なんかできるわけがない。そういう意味では、様々な主張をする人たちが、それなりに利害関係にありながらこの問題に関係している。
たとえば、さっきのニューヨークでの日本語幼稚園の園長先生の話でいえば、彼女のビジネスは「現地幼稚園に通わせることは日本人の子どもの発達に良くない」のでなければ成り立たない。それを否定するような考え方が出てくるはずがない。
結局のところ、早期英語教育反対派の人たちの究極の主張というのは、幼児期に別の言語に接触したら知能の発達に何らかの恒久的な悪影響が現れる、ということだと思うが、その根拠となるような学術的な研究はほとんど存在しない。
もっとも、早期英語教育がどんな成果をもたらすかは未知数(充分な成果をあげている家庭もたくさん存在するので、さほど未開拓のエリアというほどではないが)。それを自分で試すぐらいの冒険はしてみたい、と思って現在、取組中だ。
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9 件のコメント:
私もこのサリー・ウォードさんの本、持ってます!私もなおぱぱさん同様、バイリンガル育児は発話の時期を遅らせるケースはあるものの、発話そのものに影響はないという認識をしていました。
しかし・・・最近、どうして親子英語の先輩方の記事は、早期英語教育についてあらためて考えてるものが多いのだろうか(永遠のテーマなのかもしれませんが)・・・と思っていたのですが、やっとブログ上で、状況がわかりました^^;いろんな意見がありますね。
>自分で試すぐらいの冒険はしてみたい
同感です!
うちもりゅうちんが言葉が遅かったので、気になりました。
検診では、とにかく人見知りだったので、検診の場では泣いてばかりで一言も言葉を発したことが3歳半検診までなかったので(笑)いつも家ではこんな風にしゃべってます、みたいな自己申告で乗り切ってました(^^;
母国語じゃない言葉っていうのもすごく分かります~・・・私も今、りゅうちんの英語が今以上に伸びないのは私としかしゃべらないからだと思うし・・。
いろんな意見がありますね、本当に。
でも発育上、本当に問題がありそうだと気づいても続けようとか、そういうことは思ってないので、まあ、いいかな・・?
先輩たちがブログで大丈夫だということを立証してくれてるので、少し安心したり^^;
英語育児!絶賛実施中♪っていいですね。
私も使用させてください。このフレーズ(笑)
英語育児。子供に良くない影響がとかいう記事を見るとドキリとしますが、実は本格的に流行る前に始めてる。というのが意外と私には楽しみの一部だったりしてます(笑)
はじめまして!
ふらふらとネットサーフィンしていて思わず飛びつきました!
私は5歳の女の子と3歳の男の子の母親です。
英語力は日常会話レベルしかないにもかかわらず、娘が生まれたときから英語育児をしてきました。
しかもほぼ100%英語という無謀なものです。
そしてその影響か発話が遅く、検診ごと要観察という診断を受けてました。
それでも「日本語は日本にいれば大丈夫!」と信じて英語育児を続行しました。
英語は英語ネイティブの歳相応とまでは行かずとも、英語ネイティブと普通に会話できます。
絵本も700文字前後の洋書が読めるようになりました。
ただ、うちの子は3歳になるまで日本語が単語レベルでしか話せませんでしたので、周りの日本人の友達はみんな心配して紹介されてる本もいただいたし、色々英語育児をやめるように説得されました。
でもなぜか英語圏の友達にはみないい取り組みだと言ってもらってました。
そして今年から保育園に行き始めて日本語があっという間にぺらぺらに!
何も心配なかったと。
ただ母語でない英語で育児して本当に大丈夫なのかという疑問は常々持っていました。
それで日本の英語育児の本を読んでも埒が明かないて思って海外のバイリンガル育児本に手をだしてみました。
読んでびっくり私が手にしたものはすべて早期バイリンガル育児を推進してました。
さらにそのうちの一つに紹介してあった
http://www.multilingualchildren.org/
このウェブサイトを見つけて今までの心配事が一気に吹っ飛びました。
もちろん今の時点で私のやり方が正しいということではないのですが、答えがない限り色々試す価値ありだと信じてます。
長々と失礼しました!
>cottonさん
そうなんですよ(^^; それなりにご自身の経験などに基づいているんですけど、いかにも事実みたいに悪影響について書かれると、ちょっと反論したくなってしまいます(笑)
結局、自分の子なので、自分の信念に従って育てないといけませんよね。
>りゅうママさん
親子英語をやっているかどうかとは別に、その子自身の持って生まれつきの言葉の早い・遅いがあって、難しいですよね。先輩方の報告を見ていると、まあ問題ないんだろうな、というのがわかります。
>masyaままさん
自分で「絶賛」しているのがポイントです!不安を持ちながら、というのは良くありませんよね。
>cottonさん
お母さんがほぼ100%英語、というのが凄いですね。周りからのプレッシャーも相当だったのではないでしょうか。
英語圏の人は、何かの悪影響とかをあまりぐじぐじ考えませんよね。早い時期に始めた?それは良いよ!みたいな感じです(笑)
そして、保育園で日本語があっという間に追いついてきた、というのを聞いて、ここをのぞいている方々もほっとしたのではないかと思います。
たいていは、幼稚園の間に日本語が優位になりすぎて、英語が消えてしまう方を心配しないといけないようです。
悪影響説を振り払うためにも、お互い頑張りましょう!
本当に同感です!
なおぱぱさんは関連本も読まれていたり、意見も論理的に書かれているので毎度納得できます(^^)
同士(?)としてとても心強い!
結局はまだ何も立証されていない事ではあるけども、幼児教育業界では二カ国語教育を大推薦できない理由もわかります。
そして自分達を含め、テレビや本、様々な職業の人たちが中立の立場では意見を言えないのも事実ですね。
ただ否定する人がいるからこそ、議論しながら「ではどうすれば二カ国語教育をしつつ知能を上げていけるのか」を探れるのだと思います。
なら反対派のブログにお邪魔してコメントを残せば良いのでしょうが、言葉の武器がないままそんな行動に出る勇気がなくて、、、自分のブログで吠えているだけです(笑)
お互いに自分の考えを、そして子供達を信じて続けて行きましょう!
>苺ママさん
R太郎くんのめざましい発達ぶりが心の支えです(^^)
反対派のブログに意見を残しても、結局「私は自分の目で見てこう感じるだけ」というところに結局戻ってしまうので、不毛かなと思います。
ただ、決して早期英語教育=悪影響というのが事実ではないことはアピールしておきたい、と思ったのです。
はじめまして、いつもこっそり拝見していました。
>それを自分で試すぐらいの冒険はしてみたい
まさにその通りですね。
私など、語りかけもできず、親子英語というのもはばかられる微々たる取組みですが…本当に2000時間かけたら、少しはできるようになるの?
という素朴な疑問が英語育児の発端です。
早期英語教育の是非はきっと永遠のテーマだと思います。絶賛一直線という世論もそれはそれで怖いと思うので、(日本人の場合、日本語排斥しかねないような…)今ぐらいでやいのやいの言ってる間に、やろうと思った人間がやってみるぐらいがいいのではないでしょうか。
いつも刺激的な記事をありがとうございます。これからも楽しみにしています。
>うららさん
はじめまして。実は私もうららさんのブログ、こっそり拝見していました(^^:
早期英語教育、それなりに敷居が高いのを乗り越えて取り組んだ家庭にそれなりのメリットが、ぐらいでちょうどいいと思います。
始めたからには子どもの様子を見ながらフレキシブルに、続けたいですね。
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